魔女の夢



お父様が私の頭を撫でてくれていた。

『お父様、私、ちゃんとお医者様になったのよ。まだ半人前だけど、研修もあと1年も無いわ』

私の言葉にお父様は笑っていた。

滅多に見た事が無いお父様の笑顔。

頭を撫でて貰った事も無い。

初めてお父様の前で泣いた時に抱き上げて貰った以外、触れる事すらほとんどなかった。

いつも言葉少なく、怖い顔をして、それでもその存在が何よりも頼もしかった。

『静香』と、そう名前を呼ばれるだけで幸せだった。

お父様、どうして死んでしまったの?



あ、いたた・・・昨夜はやっぱり飲み過ぎてしまったのね。

ガンガンと響く頭を押さえながら私は起き上がって・・・ビックリした。

どうしてコイツが私のベッドにいるの?

しかも服を着たまま。

そう言えば・・・私はどうして自分の部屋で寝ているの?

温室で飲んでいた筈なのに。

もしかしてコイツが運んでくれたとか?

私も服を着たままで・・・珍しくコイツが何もしなかったの?

呆然と私の隣で寝ているヤツを見ていると、ヤツが目を覚ました。

「ああ、起きていたんですか」

呑気にそんな事を言って、起き上がり、伸びをした。

「まだ少し早いですね。二日酔いなら薬を持ってきますか?」

時計を見ながらそんな事を言ってベッドを出た。

「・・・ええ、お願い」

呆然としたままの私はそう答えるのが精一杯だった。

部屋を出て行くヤツに私は慌てて声を掛けた。

「あの・・・ありがとう」

迷惑を掛けた様なのは確かだから、お礼は言わないと。

私の言葉にヤツはニッコリと笑った。

「いいえ、どういたしまして。ただあんな無茶な飲み方は良くないですよ。身体を壊しますから」

余計なお世話よ。

ムッとした私にヤツは笑い声を上げて出て行った。



峯下杜也は変な男だ。

強引に私の家に住み始めた癖に、強引に事に及ぶ事をあまりしない。

研修医として真面目に病院に通っているし、勉強もかなりしているから?

そしてやはり強引に増やした使用人にも慣れた丁寧な対応をしている。

よほど母親の実家とやらは裕福だったのね。

私と同じで家事は出来ないらしいが、人に命令する事に慣れている。

掃除・洗濯・食事、口調は丁寧だがさり気なく自分の要求を通してしまう。

特に食事。

あの好き嫌いの激しさには驚いた。

食べる量は決して少なくは無いのに、あれは駄目、これは嫌いだと言って偏食気味だ。

「偏った食事はよくないんじゃないかしら?」

そう忠告すると

「僕はもう充分に成長しましたし、足りない栄養を補う方法はいくらでもありますよ」

と、気にも留めない。

それどころか

「あなたこそ、もっと食べないと。そんなにガリガリでは抱き心地が悪いですよ」

私は普通よ、ガリガリに痩せてなんていないわ。

それは、確かに背が低くて肉付きは悪いかもしれないけれど・・・ってヤツの為に太る必要なんてどこにもないわ。

そして、そしてヤツはあの夜から毎晩、何故か私のベッドで眠る。

鍵を掛けていても、いつの間にか隣で眠っている。

もちろん、ただ眠るだけじゃない時もあるけれど、何もしない時もある。

例えば、ヤツの帰りが遅くて私が先に眠ってしまった時など、起きると隣で眠っていたりとか。

その逆に私が遅くなった時に既に寝ていたり。

「自分の部屋があるでしょう?」

そう言っても

「あなたも僕も寝相は悪くない。一緒に寝る事に何か問題でも?」

そう言い返されて返答に困る。

そう、私は困っている。



「静香様、その・・・あの杜也様とは・・・」

私に聞き辛そうに尋ねて来るのは、この家に長年働いている小鳥遊さん。

家政婦として、料理人であるご主人と共に勤めてくれている。

使用人を整理して減らした時も、このご夫婦だけには残って貰っていた。

私達が引き取られる以前から勤めているこの人は何でも知っている。

私達の母親の事、ヤツの母親の事、ヤツが誰なのか、そして私とヤツが何をしているのかも。

もちろん、ヤツと私の血が繋がっていない事も知っているけれど。

「大丈夫よ、小鳥遊さん。あの人は1年間だけこの家に居るだけだから」

だから心配しないで、とニッコリ笑って答える。

何の心配をしてくれているのか判らないけれどね。

この人は色々と幼い私に吹き込んでくれた人だから。

私達兄弟に優しくしてくれたし(同情かもしれないけれど)よく働いてくれるし、悪い人ではないと思う。

けれど、ヤツの母親を悪し様に言う時の顔や、こんな事を聞いて来たりする時の顔はどうしても好きになれない。

雇い主に媚を売っているのか、好奇心旺盛なのか・・・どうでもいい事かしら。

でも、こんな事を聞かれたりするのは困るわ。



「ん・・・ぁあ」

そして何より困るのは、ヤツとする事が嫌どころか気持ちイイと感じて受け入れてしまっている事。

今だって、日曜の朝だと言うのにヤツの愛撫に起こされて、後ろから突かれている。

「ぁ・・・ぃや」

片脚を持ち上げられて背後から挿れられて突かれる場所が凄く感じてしまう。

「ああ・・・やっぱりココが感じますか?」

ヤツは息を荒げながらも、同じ場所を攻めて来る。

さっき指で探られた一番感じる場所、Gスポットと呼ばれる所。

「っ・・・くぅ」

体を仰け反らせて私はイッてしまう。

そして太腿に流れ落ちる感触。

コイツは一度も避妊具を着けた事が無い。

「・・・無精者」

私はいつも渋々と言った感じで後始末をさせられる。

「僕にはいつでも責任を取る用意がありますから」

責任?

あのふざけたプロポーズの事?

「責任なら、事前に準備をする事で取って欲しいものだわ」

私は腹立ち紛れに使用済みのティッシュをヤツに投げた。

「どうしても着けて欲しいなら、あなたが着けて下さいますか?」

私に?

AV女優の真似事をしろと?

ヤツのモノに口を付けるのは勿論、手で触るのだってホントは嫌なのに。

「ご免だわ」

「では、我慢して頂かないと」

爽やかに笑って返すヤツは、私を自分の腕の中に抱き入れて、私の髪や顔に唇を滑らせる。

こういった行為も・・・嫌じゃないから困るわ。

「・・・聞きましたよ。入院患者からのプロポーズは受けたそうじゃありませんか」

ああ、あの事・・・一体誰がコイツにそんな事を喋ったのかしら?

コイツは既に小児科ではなく精神科に居ると言うのに。

「10歳の子供の戯言よ」

看護師の噂を聞き付けた将真くんが「結婚するのか?」と尋ねて来たので「いいえ」と答えると「貰い手が無いなら俺が貰ってやる」と言ってくれただけの話。

「酷い人ですね。少年の純情を無碍にするとは」

失礼ね、ちゃんと「大人になっても気持ちが変わらなかったらお願いするわ」と答えてあげたのに。

「僕の言葉も戯言だと思っているんですか?」

僕は子供ではないんですがねぇ、などと言う。

あれが戯言ではなく何だと?

結婚なんて考えても居ないし、それに第一。

「あなたのご両親が反対なさるんじゃなくて?」

私と結婚するなどと言い出したら、あの女は頭に角を生やして猛反対する事でしょうよ。

会った事は無いけれど、コイツの実の父親だっていい気分にはならない筈。

「僕は今まで散々両親に振り回されてきましたからね。もう彼らに僕の人生に口出しをさせるつもりはありませんよ」

そう言うものかしら?

「あなたはご兄弟の反対が怖いんですか?」

そんな事は考えてもみなかったわ。

「私には結婚する気が無いもの」

ヤツは私の言葉に笑った。

「僕たちは結構お似合いだと思うんですが、同業で仕事について理解出来るし、物の価値観も似ている。そして何より身体の相性も悪くない」

その言葉に反論は出来ないけれど、イヤらしく体を触るのはやめて欲しいわ。

「あなたは子供が好きだから小児科を選んだのでしょう?自分の子供が欲しくは無いんですか?」

私が小児科を選んだのはそれだけじゃないわよ。

「・・・年寄りより、子供の方が助け甲斐があると思ったからよ」

自分の子供なんて・・・あまり考えた事が無い。

兄弟達の子供達が沢山いるんですもの、私一人が生まなくたって構わないでしょう。

「素直じゃない言い方ですね。高齢出産になる前に生んでみたらどうですか?」

それで避妊をしないの?

「僕は自分の子供を私生児にするつもりも、見殺しにするつもりもありませんよ」

ヤツの強い視線に思わず怯んでしまう。

本気なの?

私だって避妊には気を使っているけれど、堕胎までは考えた事が無い。

もし、万が一にも子供が出来てしまっても、今の私には一人で生んで育てる事が出来るし。

でも確かに・・・私生児というのは嫌な言葉だわ。

私も、本来は違っていたヤツもその事で嫌な思いをしてきたのは事実だろうし。

結婚・・・ヤツと?

考えるべきなの?

この快楽の果てにある結果として妊娠が待っている可能性があるのも事実。

それを考えずに快楽だけを貪るのはあまりにも非現実的だわね。

ただ、ヤツの言葉を正直に信じていいものなのかしら?

今まで考えた事が無かった結婚をする相手として、コイツは相応しいのか?

お互いに知り合ってからはかなり経つけれど、それまでお互いに嫌な相手としてしか認識していなかったのに?

第一、つい最近まで、コイツはともかく、私は腹違いとは言え姉弟だと思っていたのに?

一緒に暮らし始めてまだ1ヶ月と少ししか経っていないのに?

それでも、ヤツが言う様に、私達は意外と一緒に暮らしていて苦痛ではないのが事実。

不規則な研修医の生活はお互いに理解出来るし、ヤツの偏食には呆れたけれど私が家事をしない事にヤツが不平や文句を言った事も無い。

ヤツが言った価値観、と言うのは、使用人を使う事に慣れている事だろうか?

それともお金の使い方について?

私とヤツは金遣いが荒い訳ではないけれど、洋服や食事にお金を掛ける方だと思う。

貴金属や骨董といったものに興味が無い代わりといってはなんだけど。

まだお互いに研修中で大したお給料を貰ってはいないけれど、服や食事は良い物を選ぶ事が身についている。

最近、忙しい私はデパートの外商を呼んで服を買うと同僚に漏らしたら酷く驚かれた。

ヤツはそれを見ても平然としていたし、それどころか自分が馴染みのテーラーを呼び寄せて採寸をさせていた。

聞けばシャツからスーツまで全てオーダーメイドなのだという。

私もサイズが標準ではないから自然とそう言った物が多くなるから、別に驚かなかった。

でも、結婚となると・・・私は密かに憬れていた事があったのに。

誰にも言った事は無いけれど、結婚するなら外国人で金髪に青い瞳なら、お姉様の処のジュニアのように可愛い子供が生まれるんじゃないかと思った事はある。

実際問題、外国人と出会う機会などないし、私は外国で暮らすつもりもないから、夢物語でしかないけれど。

だから結婚なんてするつもりはなかったのに。

身体の相性が良いのか悪いのか、私はコイツ以外と経験した事が無いから比較のしようが無いけれど、悪くないのだと言う事だけは何となく判る。

最近、看護師達に意味ありげに言われる「波生先生、お肌がキレイですね」とか「少し太りました?」とか。

これはセックスが齎すと言う女性ホルモンの分泌によるお陰だとでも言うのかしら?

確かにいつもオーガズムを感じている。

ヤツが『相性がいい』と言うなら、ヤツも私で満足出来ていると言う事?

いえ、ヤツがどう感じているかなんてどうでもいい事。

問題は、一緒に暮らしていて何も問題を感じない事。

困ったわ。





6月15日土曜日。

毎月、15日は父の月命日。

私は父を偲んで、一人静かに父の好きだったバーボンを傾ける。

筈なのに、どうしてヤツまで居るのかしら?

そう言えば先月も居たような・・・飲めないヤツなど無視すればいいと思っていると、ヤツはグラスを持ち出してきた。

「飲めるの?」

「あなたほど強くはありませんが、人並みには」

ふうん、人前では謀っていたと言う訳?

ま、私には関係ないわ、とグラスを呷る。

咽喉を焼くような強い刺激。

それがゆっくりと胃まで流れ落ちていく。

身体の機能を感じさせる試薬のようだわ。

ふっと熱い息を吐く。

「強いですね」

私が強いのではなく、他の人が弱いのよ。

でも、そう言ったヤツも私と同じようにグラスを一瞬で空けた。

そしてまたグラスを満たす。

顔色は変わらない。

本当に飲めるのね。

「どうして飲めない振りをしているの?」

飲み会で飲めないと宣言する事は、付き合いを拒絶するような事でしかないのに。

「僕は気が許せない人間の前で飲むのが嫌なんですよ」

酔うと理性が飛び易いですからね。

ニッコリ笑ってグラスを掲げる。

それって、どう受け取るべき言葉なのかしら?

私が酔うと何度か理性を飛ばしていたのを見たから、それを論っているのか?

それとも、私に気を許していると言いたいのか?

考えるのも面倒になって、温室の薔薇に視線と思考を移す。

薔薇は満開になり、いい香りを漂わせている。

今なら妖精の赤ん坊が見つけられそうなくらいに。

くすっ、幼い頃に私が父にそう言ったら、父は困惑した顔をしていたわ。

「思い出し笑いとはイヤラシイですね」

煩いわね。

今夜は思い出に浸る夜なのに。

「ねえ」

私はヤツに視線を向けずに問いかけた。

「恋の成就ってどんな事を言うのかしらね?」

ああ、確かに酔うと理性が飛び易くなるのかも知れないわ。

こんな事をヤツに尋ねるなんて。

「さあ?判りませんね。僕は恋の成就なんて願った事がないので」

詰らない男。

それにしても、恋の成就を願った事がないとは。

コイツは恋をした事が無いと言いたいのかしら?

そうね、コイツは私と結婚するとか言っているけれど、『好き』とか『愛してる』といった事を言った事がないものね。

それならどうして結婚なんて言い出すのかしら?

同じ医者で、価値観が同じで、身体の相性がいいから?

確かに結婚と恋愛は別物だと言うけれど。

「そんな事より・・・」

ヤツは私のグラスを取り上げて、私の身体を膝の上に抱き上げた。

そんな事ってなによぉ。

私がずっと考えている事なのに。

酒の匂いをさせたヤツとのキスは初めて。

珍しくて新鮮な感じがする。

「ん・・・んはぁっ」

唇が離れた時には息が上がっている。

酔いが回りそうだわ。

ぼぉっとしていると、ヤツは私の服を手早く脱がしていく。

「ここで?」

「ここでするのも初めてではないでしょう?」

そうね。

ヤツは私を自分の膝の上に膝立ちにさせて、私の肌蹴た胸に吸い付いた。

「あ・・・ん、んん」

「少しは大きくなりました?」

言えないけれど、実はそうなの。

私の胸はコイツの所為で少しだけサイズアップを果たしていた。

でも、ヤツにそんな事を言うわけにもいかない。

私は首を仰け反らせて満開の薔薇の花に視線を移す。

薔薇の花に囲まれて男に抱かれる。

これってファンタジーっぽい?

お父様が知ったら呆れる事請け合いだわ。

それも相手はコイツ。

お父様はコイツが自分の息子だと死ぬまで信じていたのでしょうから。

自分の娘と息子がこんな事をしていると知ったら・・・怒るかしら?呆れるかしら?

私が身体を揺らして笑うと、ヤツが私の顎を捕まえた。

「おい、今、オマエを抱いているのは誰だ?」

え?何を言い出すの?

それにその言葉遣い。

いつもの口調と違って乱暴じゃなくて?

「誰だか名前を言ってみろ」

「・・・たけ、じゃなかった・・・峯下杜也」

ヤツの強い口調に少し唖然となりながら、言われるままにヤツの名前を言った。

「そうだ。俺に抱かれてるのに他の事を考えてるんじゃねぇよ」

あらあら、杜也さん、今まで折角被っていた猫が剥がれ落ちていますわよ。

「それがあなたの本性なの?」

私はヤツの本性が垣間見えて嬉しかった。

いつも丁寧な尊敬語口調で薄気味悪かったから。

「そうだよ。言っただろ?酒を飲むと理性が飛びやすいって」

チクショウ、とボヤキながらヤツは悔しそう。

「知られるのが嫌なら飲まなければいいのに」

今までだって飲んでいなかったのだから。

「オマエは飲み過ぎると記憶を失くしちまうだろうが?俺は抱いた事を忘れられるのが嫌なんだよ」

オマエが飲み過ぎないように俺も飲んだんだ、と言い切る。

呆れた理由。

別に私が憶えていようが居まいが ヤツには関係ないでしょうに。

「俺に抱かれている時は、ちゃんと俺の名前を呼べ」

何様?

でも・・・こういうのも悪くない。

「・・・杜也」

私は面白くなってヤツの名前を呼んだ。

すると、ヤツも普段はあまり呼ばない私の名前を呼ぶ。

「静香、俺の理性を飛ばさせた事、後悔するなよ」

ニヤリと笑ったヤツは私の腰を押さえ付けると、そのまま自分の腰へと落とした。

「っあっ」

やや強引に挿ったモノに衝撃を受けながらも私は快感を覚えてしまう。

腰を上下に揺すられ、下からも腰を突き上げられて、私は乱暴にイカされた。

そしていつものように中に出される。

ヤツは自分の身形を整えると、そのままの私を抱えて部屋へと運ぶ。

てっきり、そのまま寝かせてもらえるものだと思っていたら、ヤツは自分の服を脱ぎ出して私に覆い被さって来た。

「・・・まだするの?」

呆れた私が尋ねると

「だから後悔すんなって言ったろ?」

意味深げに笑う。

私はヤツに夜明け近くまで寝かせて貰えず、声は嗄れ、腰は重くなった事に少しだけ後悔した。

けれど、朝、目覚めた時に

「目が腫れて酷い顔ですよ、静香さん」

いつもの口調に戻ったヤツを見てガッカリしてしまった。

だからつい、もう一度本性を見せたヤツが見たくて、私は何度もヤツにお酒を飲ませる羽目になった。

ヤツはそんな私を面白そうに見ているだけで、中々本性を出さない。

お酒を飲めば本性を出すとは限らないらしい。

けれど、毎月15日の日は、ヤツもかなりの量を飲んで、呆気なく本性を曝す。

私は次第にそれを楽しみにするようになっている自分に気づいて少し驚く。

「懲りない女だな、オマエは」

そう言われて微笑む自分に気づくと愕然としそうになる。

これでは私はまるで・・・

嫌だ。

困るわ。



ヤツとの共同生活が半年を越えた頃、アメリカに居るお姉様から手紙が届いた。

家族の近況報告と、来年には終わる私の後期研修の後に留学する気は無いのかと尋ねて来た後に、書いてある内容に、私は渡米を決意した。




































 

Postscript


杜也の偏食は唯一と言っていい程の彼の表に出した自己主張なのかもしれません。
勉強や習い事以外では彼は甘やかされていた事でしょうから。
書いてはいませんが、杜也は母親だけでなく祖父母とも一緒に暮らしていました。
彼が母親に従っていたのは、結婚しない事で世間体を気にした祖父母と母親が諍いを起こす事を見て、それ以上の諍いの種を嫌った為です。
経済的には恵まれていても、静香達より悲惨な育ち方をしたと言えるのではないかと思います。

家政婦の小鳥遊さんは、悪い人ではありませんがちょっと困った人。
彼女が和晴にご注進して、カズ兄が乗り込んで来る・・・というパターンを考えないでもなかったのですが、それはあまり意味が無いエピソードだと思って削りました。

静香の夢とは、「金髪の外国人と結婚して父親に似た子供を持つ事」ではなく(苦笑)実はもっと別の事なのですが、それは次回に持ち越し。

このカップルで意識しているのは、お互いに言葉を隠さない事。
意地を張り合ってはいますが、実はこの二人は思っている事を結構素直に口にしています。
アレでも。

さて、次回はラストです。
上手く纏められるのか?


2009.8.29up



 

 

 

 

 

 

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