Best of all medicines 2

 そりゃね、確かに言いましたし、言われました。
 寝ちゃうかもしれないって言われて、待つよって言ったわよ。

 でもね、部屋に着くなり、ベッドに直行してパタン・キューはないでしょ?
 仮にも女の子が送ってやって側にいるんだぞう!

 あたしは今、クライスの部屋で彼の寝顔をつまみに飲んでいる。
 だってさ、クライスの部屋にはマンガも雑誌もない、あるのはお堅い本ばっかし。
 寝ている彼の側でテレビをつける訳も行かないし、そーいやマンションの傍にコンビニがあったな、と思って買い出して来た。
 何より、さっきは全然飲めなかったしね。

 じっとクライスの寝顔を睨み付けていると、そう言えば今まで彼の顔を良く見た事がない事に気づく。
 だってね、いつも眼鏡かけてるじゃない?今は寝てるからかけてないのよ。

 眼鏡があるとソレに視線が集中しちゃって気づかない事が多い。
 例えば、肌が結構白い事とか、鼻筋が通っている事とか、眉がキレイなラインを描いている事とか、髪がサラッサラな事とか、睫毛が意外と長い事とか、唇が薄い事とか、ね。

 見ているだけでは飽きてきたマルローネは、ベッドですやすや眠っているクライスの頬をチョンチョンと突付く。
 すると、クライスは眉間に皺を寄せてマルローネの攻撃を避けるように寝返りを打つ。

 おっ!逃げるとは、な〜まいきぃ!!
 マルローネは剥きになってベッドの上のクライスを追い詰める。
 いつしか彼を壁際の端まで追い込むうちに、彼女自身がベッドに上がっている事にすら気づかずに。

「いい加減にして下さい!マルローネさん!!」
 流石にクライスも目を覚まして、飛び起きてマルローネの手を振り払う。

「な、何よ、起きてたならそう言いなさいよ」
 いつまでも女の子を待たせるもんじゃないわよ、とマルローネは眼鏡を外したクライスの顔を間近に見てドキドキしながらも文句を言う事は忘れなかった。

「お待たせしてしまいましたか?それは申し訳なかったですね」
 クライスはマルローネの言葉にピクリと頬を引き攣らせながら悪びれずに詫びた。

「でも、随分と有意義に待っていらっしゃったようですが」
 チラリとテーブルの上の空き缶を見ながら嫌味を言うと、マルローネは「だって退屈だったんだもん」とブツブツ呟いた。

「アンタも飲む?」
 酔いを醒まそうとしている人間に酒を勧めるとは、と呆れた顔をしたクライスだったが、一瞬考え込んでからマルローネの差し出した缶を受け取った。

「おお、いい飲みっぷりじゃない」
 ぐーっと缶を傾けて煽るクライスにマルローネはパチパチと拍手を送った。

「なによぉ、飲めるんならそう言いなさいよ!『未成年ですから』なんて気取らないでさ!」
 ウリウリとマルローネはクライスを肘で突付く。

「さぁ、もう一本いってみよー!」
 一人で侘しく飲んでいるよりは、誰かと一緒に飲む方が楽しい、と信じているマルローネはクライスに残っている酒を勧める。

 嬉々として缶を開けるマルローネをじっと見ながらクライスがそっと溜息を洩らす。
「私が素面でお話がある、と言った事をすっかりお忘れですね。聞きたくないんですか?」

「へっ?話?そーいえば、そんな事言ってたわよね。何?言えばいいじゃない。聞いたげるよ!」
 ホロ酔い気分で上機嫌のマルローネはケラケラ笑いながら答えた。

「今、話しても貴女は憶えてなさそうですね」
 マルローネの酔いはかなり回ってきている、とクライスは思って諦めようとしているが
「言いなさいよぉ、えっと、確かその為にあたしに送らせたんじゃなかったっけ?」
 ジリジリっとクライスに迫ってくるマルローネに思わず少し後図去るクライスだった。

「あっ、眼鏡かけてる!掛けない方がカワイイのにぃ〜」
 そう言って眼鏡を取り上げようとするマルローネはもはや完全なる酔っ払いだった。

「止めて下さい!マルローネさん」
 這って迫るマルローネに追い詰められたクライスは少し酔っていた所為か、あっさりと眼鏡を取り上げられてしまう。

「へへへっ、やっぱ眼鏡はない方がいいオトコだよ〜」
 マルローネはクライスの頬を撫で撫でしてから唇にチュッとキスをした。

「マ、マルローネさん!」
 クライスは急激に上昇した血圧で真っ赤になった。

「あっ!赤くなった!カワイ〜〜イ!食べちゃいたいくらい♪」
 クライスの反応にマルローネは彼の頭をギュッとその豊かな胸に抱きしめた。

「は、放して下さい!」
 クライスは腕をバタバタと振り回すが、柔らかい感触に更に上昇した血圧が酔いを早く廻していき、力が入らない。

「いや〜ん、放さない!アンタはあたしのものにすんの!ね?」
 マルローネはクライスの顔を両手で挟み込んで、コツンと額を合わせた。

「『あたしのもの』って・・・それは・・・」
 言葉に詰まるクライスにマルローネは悲しそうな顔をして彼の顔を覗き込む。
「あたしの事、嫌いなの?」

 酔いが廻って力は入らずとも、意識はしっかりしているクライスは否定する事が出来なかった。
 元々、彼女に素面でキチンと告白しようと、先日の飲み会からずっと口説き文句を考えていたのだ。
 レポート用紙にして軽く10枚ほどの大作を。
 酔っていては呂律が廻らなくなったり、彼女に信用して貰えなかったりするかもしれないと、万全を記したはずなのに。
 
 躊躇っているクライスにマルローネはしょんぼりと結論付けた。
「やっぱ、酒飲んで迫ってくるような年上女は嫌いなのね?」

「い、いいえ、そんな事は・・・」
 慌てて否定したクライスにマルローネは瞳を輝かせて再び尋ねる。
「じゃあ、好き?」

 様々な美辞麗句を捻り出したあの日々は?無駄だったのか?
 クライスの脳裏に一瞬、レポート用紙10枚分の告白文が物凄いスピードで過ぎった。

「・・・はい」
 この一言で終わるとは・・・ガックリしたように答えたクライスにマルローネは能天気に
「あたしも〜!」
 と手を高々と上げて答えた。

「あたし達、両思いだね〜!」
 はしゃいでクライスの首にしがみ付くマルローネの言葉にクライスは「はぁ」と力なく答える。

「じゃあ『えっち』しよっか?」
 ニコニコと微笑んで言ってくるマルローネにクライスはまじまじと彼女の顔を見た。

「え?」
 えっち、って・・・まさか、そんな、女性から・・・いや、この間も言い出したのは彼女の方からだったし。
 クライスは急激な展開に思考を廻らせて固まっていると、マルローネはクライスのシャツのボタンを外し始める。

「脱いで脱いで〜」
 クライスのシャツのボタンを全て外しズボンのベルトとファスナーを下ろすと、自分の着ていたタンクトップを脱ぎ捨てジーンズを脱いだ。

「マ、マ、マルローネさん!!!」
 下着姿になった彼女を目の辺りにしてクライスはうろたえた。
 このまま、一気に進んでしまってよいものか?

「えへっ、やっぱ初めてのえっちは好きな人とじゃなきゃね?あたしの方が年上だけど、アンタがちゃんとリードしてくれなきゃダメだよ、男なんだからぁ」
 マルローネは下着姿でピトッとクライスに抱きついてそう言った。

 そこまで言われては、とクライスは躊躇いを捨てて、マルローネの背中に腕を廻してそっと抱き寄せた。
「優しくしてね、クライス」

 少し不安げに見上げてくるマルローネの瞳を見て、クライスは出来るだけ優しく安心させるようにと心掛けて微笑んだ。
 その笑顔にマルローネも微笑み返して、二人の顔はそっと近付いて唇が重なった。
 軽く触れてから直ぐに離れた唇は深く吸い付くように続いて、お互いの体を密着させるように腕で引き寄せ、背中を撫で擦る。

「はぁっ、クライス」
「マルローネさん・・・マリー」
 大きく深呼吸しながら呼び合う名前は、もどかしげに体から服を脱ぎ去る間に零れた。

 裸でベッドに横になったマルローネに覆い被さりながら、豊かな胸のラインから腰に欠けて手と視線を滑らせる。
「あんまし、見ないでよ」
 恥ずかしそうに足を擦り上げて隠そうとするマルローネの右膝を持ち上げて、そのまま太腿を滑り落ちた指が彼女の草叢を掻き分けていく。

「やん」
 今まで誰も触れた事のない場所を手繰り当てられて、マルローネは声を上げた。
 恥ずかしいけれど、もっと触って欲しい。

「あん!」
 クライスの唇ともう片方の手が胸をゆっくりと鷲摑んで頂を舌で弄る。
 ゆっくり廻すように揉まれて吸い付かれ、その動きに合わせるかのようにマルローネの体も動く。

 淵をなぞり、探っていた指が、一番敏感な場所に辿り着くと、彼女の体は大きく震えた。
 クライスはその膨らんだ蕾から指を離さずに温み始めた中へと進んでは戻す。

「あん、あっあん・・・クライスゥ・・・もっと・・・」
 背中を浮かす程、体を悶えさせながらマルローネが強請る。
 すっかり勃った胸の頂に強く歯を立てても、彼女には痛みに感じなくなっているようだ。

「ああっ・・・イイ!」
 髪を振り乱して粗い息を吐くマルローネの両足を持ち上げて腰を浮かせたクライスは昂ぶってきたモノを膝をついて宛がった。

 両足を肩で支えられて下半身を宙に浮いた状態にさせられたマルローネは自分の濡れた入り口を行き来するモノの感触に目をギュッと閉じた。

「力を抜いて、マリー」
 指で広げられた場所に硬い物が入り込んでくる、クライスに言われて力を抜こうとするが上手くいかない。
 恐怖で詰まる息をフッと吐いた瞬間、体を割くような痛みがあった。

「大丈夫ですか?」
 心配そうに尋ねて来るクライスにマルローネは微笑んで見せた。
「大丈夫だよ」

 クライスは浮かせていたマルローネの腰をゆっくりとベッドに下ろして、その上に覆い被さり、キスをした。
「マリー、ああ、マリー」
 クライスの熱い呼び声にマルローネは胸が締め付けられるような気がした。

 彼の背中を抱きしめて、彼の腰に足を廻して引き寄せる。
「クライス、好きよ。愛してる」
 彼の体の重みを幸福感の重みと共に嬉しく感じていた。

 マルローネの言葉ににっこりと笑ったクライスは再び彼女の足を抱え込んで起き上がった。
 そしてゆっくりと、次第にスピードを上げて活塞を繰り返す。

「あん、あん、ああん・・・あはぁん」
 激しく体を揺さぶられて、マルローネの声が動きに合わせる様に上がる。
 ベッドもガタガタと揺れている。
 クライスの息遣いが激しくなって、動きが止まった。

「クライス・・・出ちゃった?」
 ぐったりと倒れこんできた恋人に尋ねると。

「ええ、でもちゃんと責任は取りますから」
 とまだ整わぬ息の合間から答えてくる。

「そんな事じゃなくって・・・その気持ち良かった?」
 恥ずかしそうに尋ねて来るマルローネにクライスは彼女の体を引き寄せて腕を廻した。
「ええ、貴女は?」

「初めてだから、痛かったけど・・・アンタとならまたしてもいいよ」
 そう言って抱き付いて来た柔らかい体をクライスはきつく抱きしめた。

 これが結果オーライ、と言う奴ですか。
 自分が描いていた手順とは違ってはいても自分の望み通りの結果になった。
 テーブルに散乱している空き缶をチラリと見ながら、やはりアノ薬が効いたのでしょうか、と苦笑した。
 流石は百薬の長ですね、と脱帽しながらクライスはレポート用紙10枚分の記憶を消した。 


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Postscript


 タイトルの意味は『百薬の長』から、壁紙はナント『ハルシオン』です。有名な催眠鎮静薬。

 遅くなり過ぎました、30,000ヒットされたくつした様からのリクエスト。
 『クラマリで錬金術が絡むといいなぁ』ごめんなさい!遅くなり過ぎて!!
 錬金術・・・コレで悩んで止まりっぱなし・・・ゲーム世界を書くのは苦手で・・・せめて錬金術がらみで二人を化学系の学生に設定して、以前チャットで酔ったマリーがクライスに迫るというシチュも織り交ぜてみようと欲を出したら両方とも中途半端。

 マリーの責めは弱くて、二人に過去の錬金術について語らせようと思ったらそんな時間が作れない(ダメダメじゃん)
 クライスも酔ってはっきり言わないし・・・匂わせて終わりなんてサイテー!

 と言う事でご本人のリクエストもありましたので、追加いたしましたのがこのページ。
 どんなモンでしょうか?

 大まかには考えていたので、滑り出しは好調でしたが、途中でマリーが抵抗したり、クライスが攻めたり引いたり、で混乱して進まなくなって最初からやり直し。
 タイトルとも違ってきたな、と思ったので最初の考え通り、お酒を絡ませる事にしました。

 ボツにしたものは、いつものごとく鬼畜クライス君になったりしてしまいましたが、今回は純情派で(大笑)
 大虎マリーに振り回されて頂きました。

 最後までマリーにリードさせようかな?と思ってましたが、やっばりそれではちょっと・・・不味いだろうと思いまして、ヤル時は彼にちゃんとリードしてもらって(苦笑)

 お酒が入ると理性を崩して本音が言い易くなる、というのを狙ってみたんですが。
 アダルト追加分、これだけでもイケたな(苦笑)

 だから、パラレル設定は前振りが長くて・・・酔ったマリーが積極的なのが面白くてのれました。
 酔った勢いで大胆になる女性・・・いいなぁ。
 クライス君、美味しいです(笑)

 ちなみにクライス君が何日もかけて頭の中に詰め込んでおいた『レポート用紙10枚分』の告白文は多分、マリーへの熱烈な愛の告白と言うよりも彼女に対する性格分析もしくは自分の精神分析論文のような物だったと確信しております(アホや)

2003.9.12 up

 

 

 

 

 

 


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