聖母の微笑
後編



その日はピーカンだったが、長過ぎる五月病を抱え込んでるオレにはどんな天気でも気分を晴らせる事が出来なかった。


「ダりぃ」

髪を明るく染めても、派手な服を着ても、耳に穴をいくつ開けても気分は変わらない。
ダチだと言い張るヤツラと一緒に飲んで騒いでもご同様。
女は大勢で騒ぐ時に一緒に居ても構わないが、ベタベタされるのは苦手だ。
酔った勢いで抱き付く位はするが、それ以上はどうしてもストップが掛かる。
クソ親父がトラウマになっちまったのか?


「あー太陽が黄色いー」

昨夜も飲んで騒いで。
それでも講義に出ようとするオレってバカなの?真面目なの?


フラフラとしながらも人の流れに紛れて改札から駅を出ようとしてふと何かに引っぱられるカンジがした。
ん?
立ち止まって振り返ると、オレのジーンズに引っ掛かっけてあるチェーンの一つがすれ違った女子高生のカバンに絡まっている。
相手も立ち止まってこちらに気付いた様だ。


「あ、ワリィね」

一応、こっちが先に謝ってやったのに、その子は何も言わずに何の感情も覗えない表情でじっとオレを見ていた。
珍しい。
この恰好をしていれば大概の女の子は怯えるか好奇心一杯の眼をしてジロジロと見て来るモンなのに。
結構キレイな顔してるのに無表情ってどうよ?
なんか、どんなんでもいいから反応するトコを見てみたい。

「引っ掛かったのもナンカの縁だからお茶でもどう?」

手っ取り早いのがナンパだよな。
チェーンを外してから、グッと顔をその子に近付けて誘ってみた。

「間に合ってます」

スィっと顔を逸らせてオレの傍からさっさと離れていく。
引き留めようとしたが、生憎とその子は人混みに上手く紛れてしまってあっという間に見失った。

なんだ?
なんか引っ掛かる。
どっかで見たか?
見たこと・・・ある気がする?

はっきりしないモヤモヤとした気持ちを抱えてオレは学校に向かった。
お陰で講義にはさっぱり身が入らない。

オレはクソ親父に言われて色んな集まりに駆り出される事が結構ある。
その時に会ったとか?
いやいや、高校生が顔を出すような集まりには最近行ってねェ。
もっと昔か?いや、最近の様な気もする・・・

ダメだ!わかんね。

疑問はさっさと解くに限るとばかりにオレは講義か終わるとあの子の学校へと向かった。
どこの学校に通ってるかなんて制服を見りゃわかる。
オレはあの制服をよく知っていた。
なんせ、静香が通ってたガッコだからな。


校門の傍で出て来る女子高生達の中から今朝会った子を探してるとオレを見ながらクスクスと恥ずかしそうに笑ったりヒソヒソと内緒話をしたり汚いモノを見る目でジロジロ見てから通り過ぎたりと様々な反応を見せる。
そうそう、これが正しい女子高生の反応だよな。
あの子がおかし過ぎるんだ。

大抵、仲良く2.3人の小さなグループに固まって出て来る女子高生に混じって、漸く探していた相手が1人で歩きながら出て来た。

「よ!」

手を挙げて合図をしたってのに、チラリと視線を投げただけでその子はさっさとオレの脇を通り過ぎた。

「オイオイ、待てよ!」

今朝の様に逃げられては困るオレはその子の腕を掴んで引き留めた。

「なにか?」

今朝と同じ、キレイだけど何の感情もない顔。

「わざわざ会いに来てやったのにその態度はないだろ?もちっとアイソ良くしろよ!」

どこかで見ているハズの顔だ。
ちくしょう!思い出せねェ。
段々腹が立って来る。
苛立ちと共に、その子を掴んでいる手に力が入る。

「離して下さい。私には用はありません」

オレの腕を振り払おうとする。
腕が痛むのか?それでも表情は変わらない。


腕を掴んで引き留めるオレを不審に思ったのか、勇気ある子が声を掛けて来た。

「成島さん、大丈夫?」

オレは怯えたようにこちらを窺って声を掛けて来た子をボンヤリと振り返った。

成島・・・成島だって?
あの成島か?

オレは腕を掴んでいる相も変わらず無表情の子をもう一度じっと見つめながら、その面影を探す。
・・・似てる・・・かもしれない。
娘は高校生だと聞いた事がある。
間違いないのか?


「成島葵?」

フルネームを言えばピクリと頬が動く。

「どちら様ですか?」

やっぱ、そうなのか。

「波生和晴様です。ヨロシク」

引き攣りそうになる頬を持ち上げて、腕を掴んでいる力を強くする。

「茶〜も悪くないけど、ホテル行かない?オレ、アンタとやりたくなっちゃった」




マジですか?マジですか?マジですか?
オレはシャワーを頭から浴びながら現状が把握しきれずに茫然としていた。
どーしてあんな誘いに抵抗も迷いもせずに乗ってくるんだ?
お茶は断ってもホテルならOKって本気かよ?
冗談半分で誘ったのに・・・いや、ヤル気がない訳じゃないが・・・まさかホントに誘いに乗るとは・・・実は初めてじゃないから全然オッケー、とか。

勢いでホテルまで来ちゃったよ、オレ初めてなのに。
どーする、オレ!

このままヤッちまうか?説教するか?逃げ出すか?
ヤッちまうのはマズイだろ?
いくらなんでも。
慣れている(としても)相手は高校生だぞ?
静香より年下だぞ?
うん、そーだ。説教して帰そう。

オレは結論が出た事に安堵してフロ場を出た。
バスタオルで濡れた髪をガシガシと拭きながらベッドしかない部屋に戻ると、成島の娘は窓際で携帯を使っていた。


「そう・・・今日は私も遅くなりますから夕飯はいりません」

家に電話か。

「緋菜は?・・・そう、代わって?」

そう言ってオレの方を向いていた成島の娘はくるりとオレに背中を向けた。

「緋菜?いい子にしてる?」

それまで喋っていた低くてボソボソとした声とは全く違う、明るくて大きな声にオレは驚いて思わず彼女の顔を見ようと窓の傍まで近づいた。

「宿題は済んだ?・・・おやつは?もう食べたの?今日のおやつは何だった?・・・そう、お姉ちゃんは食べられないかもしれない。残念だけど」



オレは・・・オレは驚いたなんてモンじゃなかった。
彼女が、成島の娘が笑ってる・・・その笑顔ときたらなんて言うのか、その・・・キレイなんてモンじゃなかった。
光り輝いていた。


「ごめんね。今日は無理みたい。うん、明日はきっと。うん。明日ね」

ちょっと困った様に笑って目を伏せる。


おい、なんだよソレ。
さっきまでの無表情はどこへ行った?
さっきまでとのその差は何なんだ?
詐欺だろ?ソレ。
オレの悩んで出した結論をどうしてくれるんだ!
あっという間にひっくり返したくなっちまっただろ!


「じゃあ、おやすみなさい」

そう言って携帯を切った彼女はオレの方を振り返った。
そしてオレに向けた表情は・・・無かった。


「そのままだと風邪をひきませんか?」

バスタオルを腰に巻いただけで茫然と突っ立っていたオレに掛けた声もさっきとは全然違っていた。
低くて小さく呟くような声。


オレはなんだか悲しくなったきた。
どうしてオレにさっきと同じような顔を見せてくれないのか?
ついさっきまでしてたじゃないか?
振り返ってそのままオレに笑ってくれたっていいだろ?


「・・・お願いだから・・・」

「え?」

オレの思わず零れてしまった声は掠れて小さ過ぎ、彼女には聞こえなかったらしい。
オレは気力を奮い立たせて腹に力を入れた。

「葵が看病してくれるなら風邪引いてもいいな」

明るい声を絞り出す。
オレの軽いノリにも彼女は表情を変えない。

「どうする?シャワー浴びる?それとも、すぐスル?」

彼女はオレの言葉に何も答えず、黙って制服のボタンに手を掛けて脱ぎ始めた。


どうしよう?
オレ、彼女を抱けるのか?
出来るのか?
した事ないのに?

彼女を抱いて嫌われたらどうする?
嫌だ、嫌われたくない。
でも、このまま何もしないでいられるのか?
でも、無理に抱いて嫌われるよりマシじゃないか?
そして、また会う約束をして、何度も何度も逢ってもらって、オレを出来れば好きになってもらって・・・
無理だよ!ホラ、彼女はもうその気になってんのに。

彼女はあっという間に制服を脱いで下着姿になっていた。
お、制服着てると判んなかったが、意外と胸ある。

やっぱ、ヤらないとダメなのか?
本音はヤりたいだろ?
でも・・・


「・・・しないんですか?」

グダグタとオレが考えている間に彼女はさっさと服を脱いでベッドに入っていた。
いや、それもしっかり見てたけど。

「後悔しないよな?」

オレの最後の良心がそう聞く。
コクンと頷かれて、オレは覚悟を決めた。

バスタオルを外してベッドに入る。
オレからそっと視線を外す彼女に思っていたほど慣れていないのかもと思って聞いた。

「もしかして、初めて?」

黙ったままで頷く彼女は緊張しているのかもしれない。

「あ、ホントに?奇遇だね〜オレも初めて!」

明るくおどけて緊張を解そうとしたのに

「ウソ」

と言われてしまう。
チェッ、信用ねェな。ホントの事なのに。

「ウソかホントか確かめてみて」

微かに震えながら彼女の肩を抱き寄せる。
彼女も少し震えてる。

「大丈夫だよ、葵。優しくするから」

怖がらせないように微笑んで優しくそっと囁く。
間近に見る整った顔。
大きな瞳が潤んでいる。

「葵・・・」

唇をそっと寄せて触れる。
触れた瞬間に彼女の瞼が閉じて涙が零れた。
泣かないで、優しくするから。

触れたら壊してしまいそうな身体にそっと触れていく。
優しく、優しく、と心の中で呪文のように唱えながら。

長い髪の中に指を差し込んでそっと梳く。
滑らかなその感触を味わうように何度も繰り返す。
もう片方の手で頬に触れて撫でる。
顎を少し上げる様に促してキスをする。
柔らかい下唇を何度も食むようにして銜える。
息をしようと口を開いた瞬間を見逃さずに舌を割り込ませる。
舌で歯の淵をなぞり、歯の上を滑らせる。

「はぁっ」

少し苦しそうな息継ぎをする彼女から顔を少しだけ離す。
その時にオレの唾液が糸を引いた。
目を閉じていた彼女がその瞼を開く。

「苦しい?」

訊ねると首を振って否定してくれる。
息が上がって来ている彼女は心持ち顔を赤くし始めている。
頬に赤みが差すと表情が出て来たような気がする。

「じゃ、もっとちゃんとしたキスをしようか?舌を出して」

おずおずと差し出された舌をペロリと舐めてから絡ませる。
柔らかい舌に甘い唾液・・・酔っ払いそうだ。

舌を絡ませながら唇を吸い上げる。
まだ力が入っている身体を解す様にキスを続けながら撫でる。
首筋から肩を滑らせて腕まで・・・女ってこんなに細くて柔らかったっけ?

「ん、はっ」

苦しそうな彼女を見て、名残惜しいけどキスを中断する。

「鼻で息をしてみな」

そーゆーオレも息が荒い。
もう、メチャクチャ興奮している。
心臓はバクバクだし。

でも、ゼッテーやめたくなんてない!
キスを再開する。
チュッチュッと音がするほど何度も唇を合わせて、ピチャピチャと水音を立てるまで舌と唾を絡ませて。

彼女の顔はすっかり赤く染まっている。
興奮してる?
気持ちいい?
オレとキスするの気に入った?

飲んで騒いだ時にダチがベラベラ喋ってくれてた色んな体験談を記憶の隅から引っ張り出して真似てみる。
女はキスが好きだとか、最初はやさしくそれから段々と強く。
前戯は大切で、特に初めての女はよく濡らさないと、痛がるばかりでコッチも全然気持ちよくならないとか・・・持つべきものは経験豊富なダチってことか?

前戯かぁ・・・胸とかアソコとか優しく触ってから舐めるのが一番効くって言ってたよな。
まずは胸を触るべきか?

や、柔らかいしデカい!
静香より全然デカい!
年下なのに。

や、静香はチビでガリガリだし、彼女はアイツより背も高いけど、身体つきはそんなに変わらない気がするのに。

オレは彼女の乳房を推し量るように掌でヤワヤワと触った。
親指だけで探るように乳首を弾く。
コレって起ってる?
はっきりと形が判るって起ってるってコトだよな?
ってコトは感じてるってコトで・・・よっしゃ!オレ頑張る!


名残惜しい舌を離して彼女の身体を舐め始める。
全てが柔らかくてイイ匂いがする。
耳朶も首も肩も腕も指も、みんな。

「あっ、やっ」

舐められるのがくすぐったいのか、彼女が身体を捩る。
ヤダと言われても止められない。
くすぐったいのは感じてる印だとダチも言っていた。

乳首の周りをペロペロと舐め回す。
吸い付きたいけど、跡が付いたら勿体ないよなぁ・・・こんなにキレイな白い肌なんだから。
でも、乳首に吸い付くなら跡は残んないかな?

「ん!」

じっと目を瞑ったままの彼女の身体がピクッと跳ねる。
感じた?
感じたの?

調子に乗ってオレは赤ん坊みたいにチュウチュウと乳首に吸い付く。
彼女の声も甘い吐息を洩らす様に短く吐き出される。

オレは腕を彼女の背中に回して、ゆっくりと撫で下した。
そして尻から指を足の間に入れる。

少し、ホンの少しだけ濡れているような気がする。
だが、過信してはいけない。
オレも彼女も初めてなんだから、丁寧にじっくりと。

足に力を入れて、オレの指を阻もうとする彼女の太腿をゆっくりと撫でて、安心させるように彼女の耳元で囁く。

「力、抜いて、葵。大丈夫、乱暴にしないから」

彼女は堅く閉じていた目を開けてオレを見た。
ふっ、と息を吐いて、身体全体にかけていた力を少し抜いてくれた。

「大丈夫、痛くしないようにするから」

処女が怖がるのはハジメテは痛いっていう知恵があるからだって言うし、オレも彼女には気持ち良くなってもらいたいし・・・これからの為にも。

撫で回していた太股を持ち上げて膝を開かせる。
今度は抵抗がない。

左手の指を脚の間に入れて、人差し指と中指の2本でそっと撫でる。
ヌルっと滑るような気がするけど。

初めて触れた女の性器は複雑な形をしてた。
オレはちょっと焦った。

コレのどこがアレでアソコなんだ?
挿れるトコなんて全然判ンねェぞ!
どうすんだ!

と、取り敢えず、指で探って・・・
あ、襞みたいなのが確かにある。
コレの奥だな。

んーと、確かに穴はある。
でも、指が入るか入らないかの小さい穴だぞ?
コレでオレのが入るのか?

「っ」

オレが指を入り口に当てただけで彼女は痛そうに声を漏らす。
ヤ、ヤバイ!
よく濡らさないとダメなんだって!

オレは指を入口から上へと滑らせた。
確か、女が一番感じるポイントがここら辺にある筈だ。
ええっと、コレかな?

「ん・・・」

またしても彼女の身体がピクリと反応する。
よし、コレだな!
待ってろよ、ものスゴク気持ちよくさせてやるから!

オレは人差し指でソコを少し押しながらクルクルと回す様に撫でた。

「あ!」

さっきからずっと赤い顔をしている彼女がビックリしたような顔をする。
可愛い!
少しずつだけど彼女の表情が色々と変わっていく。
オレが本当に見せて欲しい顔とは違うけど、それでも彼女がオレに反応してくれているのが物凄く嬉しい。

ソコを撫で回したり襞の淵をなぞる様に指を動かしていると、確かにヌルついいたものが増えてきたような気がする。
それでも入口に触れると彼女の身体が硬直するのが判る。
まだダメだよな。
オレは彼女の膝を大きく開いて頭を入れ込む。

「あ、やだ。そんな!」

流石の彼女もオレがしようとしている事に気付いて、起き上がって止めさせようとする。

「止めて下さい。汚いです」

シャワー浴びてないから?

「全然ヘーキ。キレイだよ」

そう、不思議と汚いとか思わない。
確かに排泄器官なんだし匂いもするけど、むしろこの匂いがオレをその気にさせる。
フェロモンってヤツなのかな?
改めて目にすると複雑怪奇な形をしているけど、濡れているソコは生物の教科書に載っていたものよりもエロくてオレは何の抵抗も感じずに彼女のソレに舌を延ばした。

「ああっ!」

オレが舐めると彼女は今までで一番大きな声を上げた。
やっぱ、一番感じるんだな、ココ。
オレは彼女の太股を両手で押し広げて思いっきり足を広げさせ、舌を指と同じように上下に動かしながら舐め回した。

う〜ん、よく女の愛液の事を蜜とか言うけど、確かにそうかも。
なんか、甘く感じるんですけど。
本当なら酸性の膣内から出ている体液なワケだから酸っぱく感じると思うのに甘いとは、ドーパミンが出過ぎてオレの味覚がおかしくなってるからなのか?

オレはそんなバカな事を考えながら夢中になって舐めまくっていると

「いや、やめて・・・おかしくなる・・・」

彼女の苦しそうなそのお言葉にドキっとした。

イクのか?
イキそうなんだな?

「おかしくなってよ」

そう、処女は挿れる前に軽くイッといた方がいいらしいし、イクと入口が少し緩むとか聞いたぞ。
オレはピチャピチャと音を立てて舌を動かし、さっきまでは指1本だって入りそうもなかったソコに指をゆっくりと入れてみる。

おおっ、さっきとは全然違う!
少しだけだけど入るぞ!
やっぱ、愛撫とか前戯とか大切なんだな。

人差し指を少しずつ出し入れして滑りが良くなってきたら中指も加えて2本にする。
彼女の入口は少しずつ緩んで愛液も増えてくる。
オレの指が濡れて出し入れする際に音を立てるほど。

「あっ、やっ・・・」

彼女は何かを探す様に腕を動かしてからシーツを握りしめた。
うん、小説なんかでよくある仕草だけど、スッゴクイイ。
身悶えるってこの事なんだな。
可愛くてサイコーにイイ!

「ああっ!」

彼女の身体が大きく跳ねてからグッタリと力を抜く。
イッたのか。
よかった・・・イカせる事が出来て。


「気持ちよかった?」

オレは濡れた口元を拭ってから、彼女の茫然とした顔を覗き込んだ。
うわっ、メチャメチャ可愛い!
キスしたい!

「すっごく濡れてた。ホラこれが葵の味」

濡れた指を銜えさせると素直にオレの指を舐めて舌を絡ませてくる。
うはっ、ソレ、とってもそそるんですけど。
指がくすぐったくてムズムスするし。

我慢出来なくなったオレは指を抜いて、彼女に襲いかかる様にキスをした。

このまま入れても平気かな?
もうオレもはち切れそうなんですけど。

あーでも、ゴムどうしよ?
オレ着け方判んない。
ナマでってヤバイよな?
マナーとしても最悪だよな。
ラブホのゴムは悪戯されててヤバイっていうし。
当然ながらオレも自分で持ってないし。
ここでヤメとけってコトですか?

チクショー!
オレのバカ!
神様のイジワル!

オレは彼女の身体をギュッと抱いて我慢することにした。
ああ、小さいけど柔らかくて気持ちいい身体。
彼女に気持ち良くなってもらえれば、オレなんかどうでもイイか。


「続きはしないんですか?」

折角のオレの決意を揺さぶる彼女のお言葉。
流石にイカせただけで、キスしてただ抱きしめてそれ以上何もしなければ怪しいと思うだろう。
でもさ、察してよ!
って無理か。

「あのさ、悪いけどゴムないし。続きは次回に持ち越さない?」

是非、次回に乞うご期待してくれ!
期待に応えられるようにしとくから!

「でも、これ・・・」

そうでした、彼女の脚にオレの準備万端のナニが当たっていたんだっけ。
悪い!
オレは腰を彼女から引かせた。

「ちゃんと最後までして下さい。遠慮はいりません」

彼女はそう言うと大胆にもオレのナニに手を伸ばして握った。

「ちょっ」

やめて!
痛いです!

悶絶したオレを見て彼女が戸惑いながら握った力を緩めてくれる。
ホッ!

「優しくして、ナイーブな器官だから」

お願いします。
笑って泣きそうになった事を誤魔化すオレを見て彼女は起き上がった。
そして、徐にオレの股間に顔を近づける。

「オイ!」

オレが止めようとするのも無視して彼女はソレを口に咥えた。
うはぁ〜っ!

オレは思わず仰け反りそうになるのを必死で堪えた。
ス、スッゲー!
暖かくて濡れた感触に背筋がビリビリと痺れる。
口でこれだけ感じるならアソコに挿れたらどんだけ気持ちいいんだろ。

いやいや、それよりも

「や、やめろよ!そんな事するな」

でちゃいます、オレ。


それでも彼女は銜え込んだものを離さずに、オレの言葉を無視して口を上下に動かし始める。
ヤ、ヤバッ!
ええっと、こーゆー時は数学の公式だっけ?
どの公式?

「うわっ、離せ!」

オレは強引に彼女の身体を引き離した。
引き離すのに精いっぱいだったオレは、当然ながら自分で処理など出来ず。

うっ、いきなり顔射はマズいだろ。
確かに色っぽい光景だけど、そそられるよりも申し訳なさでいっぱいになる。

「わりぃ・・・気持ち悪いだろ?」

オレは慌ててベッドサイドにあるティッシュを数枚とって彼女の顔を拭いてから溜息を吐いた。

「こんなコトすんなよ。初めてなのに」

こーゆーコトは慣れてる女がするモンじゃねーの?
見るのも触るのも初めてだろうに。

「でも、さっきあなたも私に同じ様な事をしてましたし」

え?仕返し?
仕返しなの?
ヤられたらヤリ返さないと気が済みませんか?
意外と勝気ですね、お嬢さん。

「嫌でしたか?」

うっ!
正直に白状すれば

「・・・イヤじゃありませんでしたけど・・・」

なんつーか、男のプライドと言うか、沽券に関わると言うか・・・
悪かったな!
初めてだから早いのは勘弁してくれよ!
なんて言えるワケねーし。

「初めてなんだから、無理すんなよ。オレは葵が気持ちよくなれればそれでいいんだし」

ゴムないから挿れらんねーし。

「最後まですれば気持ちいいと聞いてますが」

げっ!
最近の女子高生ってどんだけ耳年増なんだ?
もしかして静香もそうなのか?

「オレ、持ち合わせがないからさ。ここで止めとくか?」

お金じゃなくてゴムの事ですよ。
念のため、ホテルに置いてあるモノを指し示す。

「別に構いませんよ、着けなくても。今日は大丈夫だと思いますし」

え?そんなにしたいの?
いや、そーじゃないだろ?

「あんまし自棄になんなよ」

オレはなんだか思い当って苦笑いを浮かべてしまう。

彼女は不満だか不安だかを抱え込んでいるんだろう。
だから派手でいかにもなオレとヤッちまおうと思ったんだろう。
自分を疵付ける事で不安定な感情を拭い去ろうとしたかったんだろう。
オレが髪を染めたりピアス幾つもしたりしたように。

「自棄になっている訳では・・・」

言葉で否定しても、目を逸らすと認めてるって丸判りだぜ。
クスッ、かーいーな。

「ま、今回だけで済ますつもりはねーし。次はもっと気持ちよくさせてやるからさ」

もっとベンキョしとくから。

「シャワー浴びてこいよ。あ、ソープやシャンプー使うと匂いでバレるから流すだけにしとけよ」

知ったかぶってオレはベッドに寝転んだ。
彼女はまだ何か言いたそうにしていたけど、オレが着けてたバスタオルを拾って身に纏いバスルームに行った。

はああ〜っ!
な、なんとか遣り過せた。
よ、よかった・・・無様なトコ見せなくて。
いや、十分無様だったか?

いやいや、これからだ。
これからも彼女と逢って、何度もイカせて・・・
いやいやいや、セックスだけじゃなくても。

何度も逢って、デートを重ねて、いつかはオレに見せて欲しい。
あの(多分おそらく)妹と携帯で話していた時に見せた様な輝くような優しい笑顔を。

まるで聖母の様なあの微笑。
あんな顔をしてオレを抱きしめて欲しい。

そうして・・・オレを好きになってオレを愛して欲しい。
そうしてくれたら、誰よりも大切にしてあげる。
他の誰にも負けないくらいにたくさん愛してあげるから。

だからどうか、お願いします。
オレを好きになって。









































Postscript


ええ?カズ兄ってチェリーなの?と驚かれた方もいらっしゃるかと思いますが、そうですここでの彼はチェリーボーイなのです(アッチより年上なのに)
「車と女を乗り回している」と噂の彼はとても純情で純粋な真面目青年でした(笑)

このシリーズタイトルは最初「聖女」でした。
しかし、聖女は宗教的な意味合いが主ですし(聖母もそうだけど)、聖母ならドイツ語で「マドンナ」で「あこがれの女性」の意味もあるし、とこちらへ変更いたしました。

これを書いている間、福山雅治の「化身」がヘビロテでした。
このお話のテーマ曲です(大笑)

ううっ、ADULTと折角銘打ったのに・・・挿れてない・・・
ちゃんとさせようと思ったし、葵ちゃんもヤル気満々でしが、カズ兄が強硬にダメ出しをしてしまいました。
まったく、妙な男のプライドが高くて困ります。

葵の妹・緋菜ちゃんは8歳くらいかな?
年の差はアレと同じにしようと思ってます。

前編が超シリアスなのに、どうして後編はココまでギャグなのか?
だって「お初」ってあんまし好きじゃなくて・・・
これだけヤッとけば次は「お初」っぽくなくてイイでしょ?てへ

お陰で楽しくてノリノリで書かせていただけました。
番外編で、つまり拍手で葵ちゃん視点も書いてみたいですね。
ここまで長くならないでしょうけど。

時系列的にこれが「悪女の嘆き」の前になるのでこの並びです。
実はアレは七夕あたりと考えているので、これは5月頃のお話になるのかな。


2009.7.12 up

 



 

 

 

 

 

 

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